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南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

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 (8)父兄懇談会


《9月―頭の痛い季節》 ~2003年9月の記録

 ∬第8話 父兄懇談会

翌水曜日には、下の娘の幼稚園で父兄懇談会が開かれた。

日頃から、園の生活について抱いた疑問、不満、希望、提案などは、その都度園長や担任教師に伝えるよう、心掛けていたつもりだった。
トルコで日本並みのきめ細かい保育を要求するのが無理だとは百も承知。無理を承知で、何度か校長室に足を運んだり、担任教師の空いた時間を狙って面会したりしてきた。

しかし、父兄懇談会となれば、他の父兄も同席する公の場。ここで賛意を得られれば、今まで顧みられなかった提案も、今度こそ受け入れられるかもしれない。
過去の提案、新学期開始後あらたに湧いた疑問などをノートに箇条書きにし、かすかな望みを抱きながら、私は園に出向いた。

5歳児(日本式には4歳)のクラスは全部で20名前後。昼食と、それに続く昼寝の時間を使っての会合で、園長と担任教師の双方が顔を揃えていた。
まずは園長から、父兄への提案や希望、依頼事項が順番に読み上げられた。

この園に決める前、7~8箇所の園を廻って、立地、施設・設備、雰囲気などと保育料とのバランスから最終的にここを選んだ私たちは、他の幼稚園に比べ決して高い保育料を取っているわけではないと知っていた。
それでも、父兄の中からは高い高いという声が出て困るということ。しかし、園の運営にどれだけの経費が掛かっているか。特に夏は子供の数が減って、各方面への支払いにも困る状態だったこと。せめて支払いの締め切り日には入金して欲しいことなど、園の経済状況についての理解と協力が求められた。
そして、本当はこのことを言い出すための前置きなのだろうが、来月から保育料の値上げを考えており、まだ金額は決まっていないが10%程度の値上げになるだろうと、あらかじめ了承を求めたのだった。

今年度から始まったという英語のレッスンについての報告もあった。
担任教師からは皆積極的に参加していること、ある父兄からは習ったばかりの英語を家で話してくれると、驚きの声が聞かれた。
それまでじっと聞いていた私は、ここぞとばかりに手を挙げた。
何曜日に何のレッスンが行われているかさえ、今まで知らされたことがないのだ。どんなレッスンを今まで行い、新しくどんなレッスンが始まったのか、まずそれを説明すべきではなかろうか。
「英語のレッスンが始まったといいますが、元々一日のプログラムとか、一週間のプログラム自体父兄に知らされていないと思うのですが、知らないのは私だけでしょうか?プログラムがあるのなら紙に書いて配っていただけませんか?」
そう。まだ通い始めて間もない4月の頃から、1日、1週間をどんなプログラムにのっとって過ごしているのか、それを教えて欲しい、せめて週末にはレポートのひとつでも欲しいと訴えていたのだ。

最初の1週間。慣らし期間として毎日園に詰め、どんな活動や遊びをするのか、気にするともなく観察していたことがあった。すると、朝食の後すぐに暗い部屋でアニメのビデオを見せたりする一方で、天気のいい日でも外遊びをさせなかったり、日本の常識からすれば子供の発育や教育にどうかと思うような傾向が見られ、大いに心配になって以来の訴えである。
第一、子供を預かり、面倒を見る施設というだけでなく、教育機関でもあるわけだから、プログラムがあるべきと考える方が普通だろう。

しかし、レポートを渡されたのは、それを訴えてすぐの週末の1回きりで、2度と渡されることはなかった。それも、具体的なプログラムの内容ではなく、発達課題―例えばハサミを上手に使ったか、グループ遊びが上手に出来たか―における達成度を評価したものだった。これはこれで有用かもしれないが・・・。
年齢が小さいため、プログラムを決めていても子供たちの様子次第で簡単に変更になることはありえるが、計画性なしに毎日適当に遊ばせて終わりということであれば、話は別だ。

ちなみに、トルコの幼稚園が皆同様というわけではないと思う。現に、上の娘が現在の学校の5歳児コース(現在は廃止)に通っていた頃、各自の連絡帳に毎日の報告が書かれると同時に、週末には、行ったプログラム内容がきちんとタイピングされて渡されていたのだ。
季節や月に相応しいテーマが決められ、それを様々な教材で体験学習できるようなプログラムが考案されており、トルコの幼児教育もなかなか良いなあと、日頃感心していたのだ。
それとも、単に運が良かっただけ、良い学校、先生に当たっただけなのだろうか・・・?

「わかりました。後ほどプログラムを作ってお渡しします」
そう園長は明言した。
私の意図が果たして伝わっていたかどうかは、10日後に判明することになる。

 つづく

∬第9話 続・父兄懇談会



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